匂いは記憶や感情を蘇らせてくれる。
例えば、雨の降り始めのアスファルトが焼けるような匂いは、母親がくれた5000円札1枚と1000円札1枚を握りしめて、近所のおもちゃ屋に走って[ドラゴンクエストⅡ]をゲットしに行ったあの日を思い出したり、
整髪料とたばこの煙が入り混じった匂いは、日曜日の朝の親父を思い出したりする。
鮮明な記憶では無く、感情だけが思い出されることもある。
例えば、あるシャンプーの匂いを嗅ぐと「早く学校に行ってあの娘に会いたい」という過去の恋心を、ふと今この時の想いであるかのように感じたり、
石油ストーブとヤカンの湯気の匂いを嗅ぐと妙に懐かしい気持ちになったりする。
木と畳と少しのカビの匂いを嗅ぐと妙に落ち着く、これは日本人のDNAの記憶なのかな。
音楽も記憶や感情を蘇らせてくれる。
「機動戦士ガンダム」のオープニングテーマは、小学生の時通っていたあの床屋を思い出したり。
ラフィンノーズの[I CAN'T TRUST A WOMAN]は親友と車で走った堤防道路を思い出させてくれる。
マッドカプセルマーケッツの[MIDI SURF]はフラれたあの娘の事を思い出してしまうし。
C-C-Bの[空想KISS]を聴くと俺が子供の頃住んでいた市営住宅の風景なんかを思い出すな。
辛かった事や悲しかった事も沢山あったはずなのに不思議と、どれも懐かしい思い出や感情として蘇えってくるんだよね。
そういえば話は変わらないようで変わりますが、
俺は俺の親父の歌を一度も聴いた事が無い。
昔から俺の家は母親が音楽をかけたり唄ったり、俺もエレクトーンを習ったり、よく分からない立派そうなレコードプレーヤーがあったりで、音楽が身近にあったような気がするのだが、親父が何かの曲をかけたり唄ったりというのは聞いた事がなかった。
鼻歌でさえもね。
だが俺の娘たちは俺の親父の歌を聴いたことがあるらしい。
どこでどんな歌を唄ったのか俺には分からないが、将来俺の実家の匂いと親父の唄った歌が、娘たちの思い出を引き出すトリガーになるのかもしれない。
なんか久しぶりにC-C-B聴きたくなってきたなぁ。