また会う日まで その1 【あの日本人形は今どこに】

テンジロウです。

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俺が子供の時、市営住宅に住んでいた頃、ウチに日本人形があった。

物心ついた頃から既にあったので、どの様な経緯で何故あったのかは知らないが、たしかガラスケースのような物の中に日本人形が飾ってあった。

その事に特別な違和感も想いもなく、日本人形がそこにあるのは俺にとっては当たり前だった。

夕方の5時半になったらトムとジェリーを観るぐらい当たり前だった。

 

不思議な事があった。

俺が中学3年の頃だったと思う。

深夜、俺は1人自分の部屋で寝ていた。

隣の部屋には、親父とオカンと弟が3人で寝ていたと思う。

寝ていたと思うというのは、その日確認をしたわけではないが、いつもならこの様な部屋割りで寝ていたから。

 

俺は床にフトンを敷いて寝ていたのだが、その夜は何故か突然目が覚め何気に右を見た。

すると、ファンヒーターが置いてあったはずのそこにファンヒーターでは無く日本人形が立っていた。

普段なら親父達が寝ているであろう隣の部屋に飾ってあるはずの日本人形がそこに立っていたのである。

しかも日本人形はこっちを向かずに俺の足元の方を向いて、ぼんやり青白く光っていた。

俺は日本人形をじっと見つめた。

その時、俺は特別な違和感も想いもなかったと思う。

ただ当たり前に見つめた。

日本人形は俺の足元の方、すなわち北の方角をじっと見つめていた。

どれぐらいの時間見つめていただろうか、数秒?数分?

分からないが、俺はいつの間にか再び眠りについていた。

 

朝起きて右を見ると、そこには当たり前のようにファンヒーターがあり、日本人形の姿はなかった。

 

あれは何だったのだろう?夢だったのだろうか?

それにしては妙に現実感があったような気がするのだが。

 

それから 数か月後、俺たち家族は市営住宅から引っ越す事になるが、そのころから日本人形を見ていないような気がする。

親父達が処分したのだろうか?そんな話は聞いていないが。

親父は日本人形を憶えているだろうか?今度聞いてみよう。

 

あの夜はなんだったのだろう?日本人形が俺にお別れに来てくれたのだろうか。

それとも俺が寝ていて気付かなかっただけで、いつも俺の枕元にいたのだろうか。

そもそも日本人形自体が俺の記憶違いで、そんなものはウチには最初から無かったのか。

それともただの夢だったのか。

俺が気付いていないだけで今でも枕元に立っているのだろうか。