架空の都市、マルドゥック市を舞台に、
緻密に構築された世界観で描かれるSF小説・マルドゥックシリーズ。
まるで映像を観ているかのような読書体験ができます。
人間に特殊能力を科学的に備え付ける「エンハンスメント」という技術が存在する世界の物語。
血と硝煙が漂うバイオレンス。
そうかと思うと、ポーカーやルーレット、そして法廷などで緻密な頭脳戦が繰り広げられたりします。
暗躍する犯罪組織や、腐敗した政治家。
多くの魅力的な登場人物。
禁断の科学技術によって特殊能力を身につけた「エンハンサー」と呼ばれる人々。
エンハンサー同士の苛烈な戦闘。
深層心理をえぐるような奥深い駆け引きと闘争。
多くの要素が圧縮して詰まっているような小説です。
このページでは、これからマルドゥックシリーズを読みたいという方のために、
どの順番で読めばいいかを解説します。
- 1.マルドゥック・スクランブル[完全版](全3巻)
- 2.マルドゥック・ヴェロシティ(全3巻)
- 3.マルドゥック・フラグメンツ(全1巻)
- 4.マルドゥック・アノニマス(全8巻、続刊中)
- 5.まとめと補足
1.マルドゥック・スクランブル[完全版](全3巻)
賭博師「シェル」の奸計によって爆炎に包まれた15歳の娼婦「ルーン・バロット」は
委任事件担当官である「ドクター・イースター」とネズミのウフコックに瀕死の状態で助け出される。
法律で禁止された科学技術の使用を許可される「スクランブルー09」という緊急法令を適用して、特殊能力を身につけ甦ったバロットは、シェルの行方を追う。
しかし、バロットに立ち塞がったのはシェルが雇用した委任事件担当官「ディムズデイル=ボイルド」だった。
孤独だった少女の、尊厳を懸けた苛烈な戦いを描いた第1作目。
ここからすべては始まりました。
元々は「マルドゥック・スクランブル」という小説だったのを3部に分割して、
さらに加筆修正したのが今回紹介する[完全版]です。
まずはこの「マルドゥック・スクランブル[完全版]」から。
全3巻です。
マルドゥック・スクランブル The 1st Compressionー圧縮[完全版]
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustionー燃焼[完全版]
マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaustー排気[完全版]
2.マルドゥック・ヴェロシティ(全3巻)
これは「マルドゥック・スクランブル」より以前の物語。
1作目での宿敵「ディムズデイル=ボイルド」が今作の主人公。
戦場で友軍への誤爆という罪を犯したボイルドは、
肉体改造のために軍研究所に収容される。
そんなボイルドを救ったのは、パートナーとして現れた
ユニバーサルウェポンことネズミの「ウフコック」だった。
しかし、そんな彼らを廃棄処分とするために、とある部隊が研究所に迫っていた。
マルドゥック・シリーズ第2弾「マルドゥック・ヴェロシティ」です。
時系列的には過去に戻ります。
初期09メンバー「ディムズデイル=ボイルド」の壮絶な生き様が描かれます。
良き理解者クリストファー教授の指揮の元、
仲間達と共にマルドゥック市へ向かいます。
そこで繰り広げられる血で血を洗う苛烈な激戦。
敵はアンダーグラウンドの拷問集団「カトル・カール」。
この戦いはボイルドとウフコックに何をもたらし、何を奪ったのか。
やがて事態は都市全体を巻き込む激戦へと拡がっていきます。
個人的にはこの「ヴェロシティ」が一番の傑作かなと思っています。
もちろん人それぞれ好みがあるので、あくまで私はこの作品が好きというだけです。
読んでいて、紙面から音が聞こえてくるような感覚になるのです。
ウフコックが変形した「64口径マグナム」なんていうあり得ない武器を、
主人公のボイルドが扱うのですが、その大砲のような拳銃の音が頭の中で鳴り響くのです。
そして、その砲弾のような銃撃を喰らい吹き飛ぶ敵の姿が生々しく目に浮かびます。
文章が少し特徴的で、好き嫌いが分かれると思いますが、私はドンズバではまりました。
3.マルドゥック・フラグメンツ(全1巻)
こちらは短編集です。
そして著者のインタビューも収録。
これからマルドゥックを読み始めると訳が分からないと思いますので、
「スクランブル」と「ヴェロシティ」を先に読むことをおススメします。
ファンにとってはとても魅力的で面白いストーリーが描かれます。
09の委任事件担当官として活躍していた時のボイルドとウフコックの話や、
「マルドゥック・スクランブル」をボイルドの視点からみた物語。
そしてバロットとウフコックの逸話。
次の最新作「マルドゥック・アノニマス」の予告編ともいうべき短編も収録されている等、盛りだくさんの内容となっています。
さらには「マルドゥック・スクランブル」の幻の初期原稿まで読めます。
マルドゥックシリーズの世界をさらに広げる短編集となっています。
4.マルドゥック・アノニマス(全8巻、続刊中)
マルドゥック・スクランブルから2年後の物語です。
ボイルドとの激闘を経て、自らの人生を取り戻したバロットは勉学の道に進み、
ネズミのウフコックは新たなパートナー・ロックと共に事件解決の日々を送っていた。
そんな中、とある保護依頼がイースターズ・オフィスに持ち込まれ、調査に向かった先でウフコックとロックは、謎の勢力「クインテット」と遭遇する。
現在7巻まで刊行されています。
まだ物語は終わる気配がなく、これまでになく長いストーリーです。
マルドゥック市全体を巻き込むエンハンサー同士の激戦が繰り広げられます。
そして今作は登場人物が多いです。
はっきりいって誰が誰だか分からなくなってきます。
しかしながら一人ひとりが魅力的で、敵陣営にも感情移入してしまいます。
味方勢力の「イースターズ・オフィス」と
敵勢力の「クインテット」の物語がそれぞれ紡がれていきます。
そして都市を覆う光と影。
政治的駆け引き、そして司法すらも操るマルドゥックの支配者の存在。
様々な要素が複雑に絡み合い
ハイスピードで語られるストーリーに、読む手が止まらなくなります。
「有用性の証明」と「真の均一化」を懸けたエンハンサーたちの最後の戦いがここに。
5.まとめと補足
以上が小説マルドゥックシリーズの読む順番になります。
時系列的には「2.マルドゥック・ヴェロシティ」⇒「1.マルドゥックスクランブル」⇒「3.マルドゥック・フラグメンツ」⇒「4.マルドゥック・アノニマス」
になりますが、このシリーズはナンバリングの順番で読むことをおススメします。
その他にもマルドゥック・スクランブルは
様々な展開をされています。
二次創作小説が著者公認の公式アンソロジーとなっている「マルドゥック・ストーリーズ」なんてのもあったりします。
あとは公認スピンオフ漫画「マルドゥック・デーモンズ」などなど、
マルドゥックシリーズの世界は広がり続けています。
個人的には超傑作の「マルドゥック・ヴェロシティ」のアニメ化を待っています。