男も女もなかった、子供のころの事を思い出した。
あの頃にも、君は男の子、あなたは女の子というのはたしかにあったといえばあった。
でも、みんな男でも女でもなかった。
男になりたいわけでもなく、女になりたいわけでもなく。
ただ純粋に、あの子と仲良くしたい。
ただ純粋に、誰々君が好き。
そんな時が私にもあった。
多分誰にでもあった。
幼少時代、私の近所に住んでいた同年代の子供たち。
千夏ちゃんと千春ちゃん。
よしくんに、真理ちゃん。
たかひろくんに、なつくん。
かずくん、はるきくんに、由紀ちゃん。
そこに男も女もなく、唯々みんなが好きだった。
男とか女とか、そういうのが頭に埋め込まれる前の時代が、
私にもたしかにあった。
でもいつしか周りは、あいつが好きとか。
誰々が誰々に告白したとか。
あいつ、かわいいとか。
誰々が、誰々をかっこいいって言っていたよとか・・・。
そう、中学生とかになると、周りがだんだんと男と女に変わっていった。
付き合ったとかキスをしたとか、
あいつとヤッたとか・・・。
私は、なんとなくそこに上手く乗っかることができなかった。
今思い返してみると、
なんだか周りから置いて行かれるような感覚があったような気がする。
小学生の頃は普通に接していた女子たちと、
中学生になってから話せなくなったり。
そして男子が声変りをしたり、
女子の体つきが明らかに変わってきたり。
そんな風にみんなが変わっていく中、
私は何となく生き辛さを感じ始めたかもしれない。
男は強く、そして女にモテることがすべて。
そんな価値観にみんなが囚われ始めて。
幼少のころは、ただ純粋に仲良く楽しく遊んでいたのに、
何をするにも女子を意識するようになった友達たち。
人は性欲という鎖から解き放たれることはないのだろうか。
少なくとも、幼少期の私はそんな鎖には縛られていなかった。
千夏ちゃんも、千春ちゃんも、
よしくんも、真理ちゃんも。
たかひろくんも、なつくんも。
かずくんも、はるきくんも、由紀ちゃんも。
男も女もなかった。
みんないつから男と女になってしまったんだろう。
幼馴染の女の子と、小学校に上がってからなんとなく疎遠になって。
中学校に上がってから、よく知らない男子とキスをしたって噂を聞いた時の、
何ともいえない気持ちを今でも憶えている。
何故だか、その幼馴染の女の子のお母さんの顔を思い浮かべていた私・・・謎。
この「おかえりアリス 」という漫画を読んで、
そんなことを思い出した。